上橋菜穂子の『鹿の王』はまだ読んでません。文庫本化待ちですね。
“守り人”シリーズと『獣の奏者』が面白かったので、早く読みたくはありますが。
この作者は文化人類学(だったかな?)の教授なので、少数民族の暮らしや慣習の考察や描写が非常に巧みで、それでいて児童文学の筆致で読ませるので、大変読みやすいのです。よくある頭でっかちな考証を並べ立てて難しい表現で判り難い文章で枚数稼いでるような、自分の専門知識をひけらかすような物書きの作家さんとは違いますな。
アレ? ブーメラン??
上橋菜穂子作品を読んでますと、エイミー・トムスンの『緑の少女』を思い出します。『ヴァーチャルガール』で作家デビューしたあと、この作品の為に排他的スラムに紛れ込んで路上生活を体感(確か半年ぐらい?)した経験を存分に注ぎ込んでますので、実体験という臨場感が非常にリアリスティックです。
話は、
科学者が事故で調査中の未開の惑星に取り残され、瀕死の重傷を負った所を原住生命体に保護され、彼ら独特の文化、慣習に触れ感化されながらも救助を待つというもの。
異民族、異文化の中にたった“独り”ぼっちで生きていく、生き抜いていくという所の描写がとてもネチっこく丁寧に描かれており、
作者の、
毛布にくるまって物音に怯えながら眠れぬ日々を過ごしたり、
次第にゴミ箱からまだ食べられるものを取り出す行為に抵抗がなくなっていったという体当たりの取材が見事に活かされており、
ある種の“凄み”を感じさせる作品です。